カプチーノ·カシス
「うん、なかなか美味いね」
あたしの淹れた二種類の試作品を飲んで課長が微笑む。
豆の配合が、って意味だとは思うけど、自分の淹れたもので笑顔になってくれるのはやっぱり嬉しい。
「うん、美味しい! 愛海ちゃんが淹れたからかな」
いかにもなお世辞を言う石原。コイツはたぶんあたしに気がある。
これは自惚れじゃないと思う。なぜなら、石原のアプローチはわかり易すぎるから。
「会議に出せそうですか? どちらかの配合」
「うーん……もう何パターンか試してみようか」
物腰は柔らかいけど、課長はコーヒーの味に関しては一切妥協しない。
優しいけれど厳しい、そんなところもあたしのツボで、一緒に仕事をしているとどんどん好きになってしまう。