カプチーノ·カシス
それなのに、ここへ配属されてから四年の月日がたっても、あたしが課長に想いを伝えていないのには理由がある。
別にうちの会社は社内恋愛禁止というわけでもないし、何よりあたしは世に言う肉食女子だ。
普段ならとっくに色仕掛けでもなんでも使って課長を落としにかかっていただろう。それが、できないのは……
「課長は、今日も愛妻弁当ですか?」
「うん、俺の好きな唐揚げ弁当」
お昼休み、課長は社食に行かずデスクの上でお弁当を広げる。
今日も彩りと栄養バランスの両方が完璧な、美味しそうなお弁当……
「愛海ちゃん、早く行かないと席なくなっちゃうよ」
「うん、今行く」
お弁当を作る習慣なんてないあたしは石原と連れ立って社食へ向かう。
そして石原に気付かれぬように、ふうとため息を漏らした。
……課長には奥さんと子どもが居る。
しかも話を聞いていると、夫婦仲は極めて良好。ときどきのろけ話とも取れるような内容の話をされることもある。
だから、あたしはいつまで経っても課長に告白できないのだ。