tender dragon Ⅰ
もしかしたら、あたしには何の関係もない人かもしれない。たまたま通りかかっただけとか。
でもそうは思えなかった。
だって、こっちに向かって歩いてきてるし。
あたしを真っ直ぐ捉えて近づいてくる。
見た目だって不良だもん。
帰らなくちゃ。
そう思って、少し早めに歩き出す。
ごめんね、タケくん。
あとでタケくんが怒られちゃうのかもしれないけど、今はそんなこと気にしてる余裕はない。
歩き慣れた道をいつもより早いスピードで歩く。
ふと考えた。このまま家に帰ったら、場所がバレちゃうんじゃないかって。
お母さんやお父さんに迷惑かけるわけにはいかない。だって2人は何も知らないんだもん。
あたしのために頑張って働いてくれてる。
結衣のことがあったときは、仕事を休んで傍にいてくれた。だから、気づかれたくない。
これ以上心配してほしくないから。