tender dragon Ⅰ
「はー……」
ゆっくり息を吐き出すと、少しだけ落ち着いた気がした。歩き慣れた道とは違う道を1人で進んだ。
この辺のことは、あの人よりあたしの方がよく知ってる。少し頑張って、撒けばいいだけなんだから。
あたし1人でも大丈夫。
少しスピードを早めると、後ろにいる人の足音も早くなる。一定の距離を保ってついてきてるんだ。
ストーカーされてる女の子ってこんな気分なんだろうな……怖くて、助けを呼びたくても上手く声が出ない。
走ったら追い付かれる気がして走れなかった。
いつも助けてくれる春斗はいない。
葉太も、タケくんも、芽衣も、蒼空くんも…
――希龍くんも…
ダメだなぁ、あたし。
希龍くんとはもう1週間も会ってないのに、こんな状況になったとき1番に浮かんだのは希龍くんの顔だった。
今すぐ希龍くんに会いたいと思ってしまった。
たとえ希龍くんがあたしのことを嫌いだと言っても、あたしは希龍くんが大好きなんだよ。
いつも助けて欲しいと思うのは希龍くんなの。