tender dragon Ⅰ

「結衣のお母さんが、美波に渡してほしいって言ったんだ。美波のせいじゃないって言ってたよ。」

日記の中にはあたしの名前が何度も何度も出てきていた。それと同じくらい、病気のことも。


「…ねぇ、病気って?」

あたしの知らない結衣。

気づいてあげられなかった。


「…心臓病。中学に上がってからは発作が酷くてなかなか学校行けなかったから、多分みんな知らなかったと思うけど。」


だから話したこともなかったし、助けてもらったあの日、すぐに名前が出てこなかったんだ。

全然知らなかった。

結衣はそんなこと、あたしに一度も言わなかった。きっと心配かけたくないから、なんて思ったんだろう。


「うん…知らなかった」

言ってほしかったよ。

迷惑だなんて絶対に思わないから。


「俺、美波に聞きたいことがあって。」

「何…?」

「結衣が死んだ日、電話してたんだよな?」

「うん…」

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