tender dragon Ⅰ
あの日の会話は、今でも鮮明に思い出せる。
いつもの優しい結衣の声も、家を早く出てきちゃったあたしを笑う結衣の声も…
――苦しそうな結衣の声も
「結衣から何か聞いた?」
「…ううん、聞いてないよ。」
「そっか…だったらこれ…」
希龍くんは少し悲しそうな顔をして、小さな箱を机の上に置いた。
少し汚れた白い箱。
開けてみると、小さな指輪が入っていた。
「これ、あたしに?」
「うん、結衣から。事故のときに持ってたみたいで、汚れてるけど。多分あの日、これを取りに行ってたんだ。」
「え?」
小さな指輪の横に紙が入ってる。
【~ピンキーリング~
幸せを呼ぶリング。
大切な人に送る友情の証。】