tender dragon Ⅰ
「あの日結衣は、誕生日を祝うつもりで美波を迎えに行ったけど、それは結衣が死んだこととは関係ないよ。」
違うよ。あたしがもっと早く結衣のところに行ってれば、助けてあげられたはずなんだよ。
「どうしようもなかったんだ。発作がおきるなんて誰も予想してなかったんだから。」
あのときの結衣の苦しそうな声を思い出すと、今でも胸が締め付けられる。
あたしを庇ったせいでいじめられて、苦しい思いをさせたはずなのに、死ぬときまで苦しい思いをするなんて。
「それでも…助けてあげたかった…」
「それは俺も芽衣も同じだよ。」
希龍くんは真っ直ぐあたしを見据えて、そう言った。ハッキリとした、力強い口調だった。
「一緒に行けばよかったって何度も思った。」
悔しそうで、悲しそうで。
希龍くんにとって結衣は大切な人だったんだと、失いたくない存在だったんだと、すぐに分かった。
「でも時間は戻らないから。いつまでも後悔ばっかしてても、結衣は戻ってこないんだよ。」
時間は戻らない。
そんなこと分かってる。