tender dragon Ⅰ

「あたしが結衣と友達になったから…」

ギュッと握った手のひらに、痛みを感じる。手のひらに爪が食い込んでいた。

それくらい、強く。


「あの日助けてもらっちゃったから…っ」

結衣の運命を狂わせてしまった。

結衣の人生を壊してしまった。

傷つくのはあたし1人でよかったはずなのに。


「その日記読んで分かんないのかよ!!」

バンッ、と音がした。


希龍くんが机を叩いたからだった。

立ち上がった希龍くんの顔は今にも泣きそうで、それでも怒ってるように見える。


「結衣が美波と友達になったこと、後悔してるわけないだろ!」

希龍くんにこんなに怒鳴られたの、初めてだなぁ。なんて、関係ないことを考えたりして。

何でか分からないけど、涙が溢れた。


「いじめられても我慢できるくらい傍にいたかったんだよ!料理苦手なのに誕生日に手作りケーキ作るくらい大好きだったんだよ!」

あぁ、そっか。


「幼なじみに紹介したいと思うくらい大切だったんだよ!」

あたし認めたくなかったんだなぁ。

結衣があたしと友達になったことを後悔してる、なんて。そんなこと思いたくなかった。

< 263 / 428 >

この作品をシェア

pagetop