tender dragon Ⅰ
「風邪引くぞー」
「引かないもん」
髪からポタポタ垂れる水が冷たい。
葉太は自分の隣をポンポン、と叩くと「座れば」と言う。
カチカチとリモコンをいじってチャンネルを変えている。見たい番組がないみたいで、ため息をついた。
そして、下を向いて
「…なぁ」
あたしに話しかけた。
「何?」
少し悲しそうな葉太。
何か悪いことでもしただろうか、と考えてみるけど、心当たりはない。
「やっぱ、希龍のこと好き?」
そして、予想もしてなかった質問に戸惑う。
「え…?」
そんなこと、聞かれると思ってなかったから、あからさまに動揺してしまって。そんなあたしを見て、葉太は肯定と受け取ったらしい。
「…何であいつなんだよ?」
あたしのことなんか見ずにそう聞いてきた。
でも、あたしはもう、希龍くんのことなんて…