tender dragon Ⅰ
「好きじゃないよ…」
報われない恋なんて、辛い思いするだけ。
「分かりやすい嘘つくなよ。」
「嘘なんてついてない…」
「だったら何でさっき、泣きそうな顔してたんだよ。」
あぁ、あたし泣きそうだったんだ。
自分でもそんなこと気づかなかったなぁ。
それはね、葉太。希龍くんが女の子といるところを見ちゃったからなんだよ。
「好きなんだろ?」
でも、もう諦めなくちゃ。
何も言わないあたしを見て、また、葉太は肯定と受け取ったらしい。
「あいつめちゃくちゃ気分屋じゃん」
「うん…」
「彼女だっていっぱいいるじゃん」
「っ…うん」
「なのに、何であいつなの?」
気まぐれな希龍くんも、彼女がたくさんいる希龍くんも、あたしは大好きで。
きっと嫌いになれる要素なんて1つもない。
ダメだなぁ、あたし。さっき諦めるって決めたはずなのに、全然ダメ。
好きなところはいくらでも思い付くのに、嫌いなところは1つも見つからない。