tender dragon Ⅰ
"潰してやろうか?"
と呟いたあのときの声は、希龍くんのものとは思えないほど低くて威圧感のあるもので。
「うん、聞いたよ…」
のんびりした希龍くんの雰囲気は、全くといっていいほどなかった。
「葉太が言ってた。希龍くんは優しいから、女の子から言い寄られると断れないんだって。」
「…優しくないよ」
「誰も傷つけたくなかっただけなんでしょ?」
ごめんね、気づけなくて。
誰よりも優しいあなたの、優しい嘘。
傷つけないための、優しい嘘。
「……断れなかったんだ。女の子が泣くとどうしていいか分からなくなる。…でも、一番傷つけたくなかったのは…」
ベッドから起き上がって、あたしの頬を優しく撫でる。暖かい希龍くんの手。
一番傷つけたくなかったのは?
「誰…?」
優しい目であたしを見つめるから。
優しい手で、頬を撫でるから。
期待しちゃうじゃない。