サヨナラの前に抱きしめて-泡恋-
ふいに近づく距離。
視界に入ってきた梶くんは、私の顔を覗き込み真面目な面持ちでじっ、と瞳を交差させた。
「ここで俺が世話してるの秘密ね」
「うん。でも、どうして?」
「…だって、ネコ好きとか他の子に知られるの恥ずかしいし」
こんな至近距離で、すごくドキドキしてるのに…顔をほんのり朱色に染める梶くんはずるいよ。
また胸が、きゅーって違う音を立てた。
「都倉さんにはバレちゃったけど、今日だけは特別ね」
ふわっと優しく笑うから、私は言葉が出なくて、その変わりに涙が出そう。
どうしたんだろ。なんで涙出そうなの?
「…わかった」
喉の奥から絞る声は、熱くて上擦る。
時折匂う梶くんの爽やかな香りに、また一つ胸が苦しくなった。