シンアイ
期待を込めた目で声の出所を見ると、御園藤が不審なものを見るような目でこっちを見ていた。

「何してるんだ、こんな往来の場で」

「あー、藤。美味しそうなウサギちゃんを見付けたから捕獲したとこ」

「お前の交際関係に口を出すつもりはないが、裁判沙汰になるようなことはするなよ」

「わーかってるってー」

御園蘇芳は御園藤の忠告に対してヒラヒラと手を振って返した。
……本当にわかっているのだろうか。

「同じクラスの卯崎清香(ウサキサヤカ)だったか」

「あ、はい」

突然話を振られた。

「もし蘇芳が手に負えなくなったら言ってくれ。あらゆる手を使って対処しよう」

nowです!right now!!
現在進行形で手に負えてません!!

……とは言えず、ただ曖昧に笑い返した。

しかしこの状況をどうしよう。御園蘇芳はどうすれば離してくれるんだろう。というかいつまで抱き付いてるんですかね。

「藤?蘇芳?」

そろそろ強行突破しようかと考えていると、また別なところから声が聞こえてきた。私の場所からは見えない、すなわち後ろから聞こえてきたという訳なのですが、この声は……。

「何してるの?」

出たっ!本妻高城瑠璃!


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