風に恋して
どこかの国から取り寄せたのだろうか、キレイな色合いの絨毯に、ポツリ、ポツリと雫が落ちていく。

否定したいのに、自分の身体に刻まれた紋章と先ほどのレオとのキスが……リアの記憶に疑問を投げかける。

レオもセストもリアのことを知っている。

リアが零れる涙を手で拭おうとすると、それをレオに掴まれた。ハッと顔を上げるとレオが頬を親指で拭って、目尻に溜まった涙を唇で掬った。

ズキッ、と頭の隅が疼く。

(何、か……)

頭の中で、何かが衝突するような……それなのに、感じるのは喉元に何かが詰まるような変な感覚。

「レオ様、今は――」
「リア様?湯浴みをされると伺ったのですが……」

困惑しているリアの様子を察したらしいセストがレオに何か言いかけたとき、開いたままのドアから赤毛をポニーテールにした女の子が顔を出した。

「あぁ、カタリナ、早かったね。後はよろしく」

セストが少しホッとしたようにカタリナに微笑んで、レオに声をかけた。

「レオ様、もうすぐベルトラン卿がお見えになる時間ですので、私たちは参りましょう」
「……ああ」

レオはリアの頭を撫でてからセストと共に部屋を出ていった。
< 12 / 344 >

この作品をシェア

pagetop