風に恋して
「思い出したいんです。何が本物で、何が作り物なのか、ちゃんと知りたい。それに……これ以上、待たせたくないの」

レオは、女神と人間の男の物語を知っていた。

自分の作った物語の続きだ。誰も知らないはずの秘密のハッピーエンド。

幼い頃、どうして2人が結ばれないのかと母親に聞いたことがあって、そのときに神様と人間は同じ世界に生きていないからだと教えてもらった。それなら、同じ世界に生きればいいと……男を精霊にした。

以前のリアがそれをレオにだけ話したのなら、彼は最初からリアの特別だったのだ。

そして、もう否定できない。リアはレオが好きだ。優しくリアを包んでくれる風の国の王に、恋をしている。

だから――

あるべき形へと、戻したい。すべてを思い出したい。

今、本物の記憶が自然に浮かんでくることがあればリアは迷わずそれを受け入れるだろう。けれど、それはとても長い時間がかかるように思う。

リアとレオが過ごしてきた時間のすべてを封印されてしまっているようだから。

ならば、残された方法はただ1つ――記憶修正のみ。
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