風に恋して
「なるほど……これは、鍛錬とは次元が違う」

セストは思わず呟いた。

リアの記憶の中に入ったとき、たくさんの映像が見えた。彼女の本物の記憶と偽物の記憶たちだ。流れ込んでくるそれらを見ながら、記憶の仕分けに消去。

他人の記憶を見ることによる体力消耗、精神消耗に加えて呪文使用によるそれもセストの疲労を促す。

今はセスト自身もトラッタメントを終えたばかりで万全の状態でないにしても、小分けにしてやらなければならない。集中力を保つことが一番困難だからだ。

(相当時間がかかる)

それまでリアが持つかどうか。

たった今、記憶修正できた分と残りの記憶、そしてリアの体力を考慮して……彼女の中のもう1つの命も。どう考えても綱渡りにしかならない。

セストは片手で目を覆う。

なるべく早く修正を進めて、リアが意識を取り戻してくれれば自力で仕分けができる場合も……

いや、それまでに精神的疲労がどれだけ溜まってしまうかを考えると、そのときにはリアの心が不安定であると思った方がいい。そうなると、自力での回復は難しい。

何にせよ、時間との闘いであるのに変わりはない。となれば……

「ディノ、エレナ。今、私に分けられる気はどれくらいある?」
「うーん、いつもの半分くらいなら。あまり寝てないし、トラッタメントで使ったからそんなにはあげられないよ。エレナは?」

ディノがエレナに視線を向けると、彼女はニッコリと笑った。

「私はまだまだ元気よ!」
< 260 / 344 >

この作品をシェア

pagetop