風に恋して
それから、ディノとエレナの気を使って更に修正を進めることができた。

先ほどより落ち着いたリア。ぼんやりと天井を見ていた瞳は閉じられて眠っている。そのベッドの横に椅子を持ってきて、ずっとリアの手を握っているのはレオだ。

「今日はここまでだね」

セストがそう言うと、ディノとエレナは大きく息を吐いて椅子に座る。かなり多くの気を使わせてしまったので仕方ないだろう。イヴァンは徹夜でトラッタメントを施してくれていたらしく、部屋の隅のソファで眠っている。

「人遣いが荒いのはセストじゃないの?」

ディノが恨めしそうにセストを見ている。エレナは声を出すのも億劫なようだ。

「それは失礼。どうも主に似てしまったようで」

そう軽口を叩いてみるが、セスト自身かなりつらい。立っているのがやっと、少しクラクラする。

「夕食はここに持ってこさせよう。セスト」

言ったそばからそう声を掛けられて、セストはため息をつく。

「承知しました。メニューは?」
『もー!』

すると、先ほどまで大人しくしていた風がヒュッと部屋を駆け回る。緩やかなので、部屋の備品を傷つけることはないが……

「もー、ですか?」
『もー、もー』

セストが困惑していると、レオがクッと笑った。

「桃じゃないのか?リアがよく食べていただろ」
「あぁ……」

さすが父親というべきか。いや、ただ単にリアの行動を把握しているだけかもしれない。セストは紙を取り出して、言の葉を乗せるとそれを吹き飛ばした。
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