風に恋して
(大、丈夫……)

きっと大丈夫だ。大丈夫にしてみせる。

使ってはいけない。

そう、教えられていた。リアが赤い瞳の所有者だということが知れたら、彼女自身に危険が及ぶ。そして、副作用に苦しむのもリアだ。

だが、両親たちが“使ってはいけない”と教えていた一番の理由は、リアがそれを使いこなせていないから。使いこなせるレベルの集中力を持続させることができない。

リアが優秀だと言われるのは、16歳という年齢を考えれば素晴らしい技術を持っているということであって、まだ成長途中であるリアの肉体も精神も“赤い瞳”を使いこなすには早熟。

リア自身、それを理解していた。していたけれど、そんなことは瀕死のマルコを目の前にしたら霞んでしまったのだ。

“助けなくては”という思いの前に。

「っ、リア!いけません!」

娘の心の動きを逸早く感じ取ったクラウディアがリアを止めようと手を伸ばしたけれど、それは空を切った――
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