風に恋して
レオが明るくなってきた部屋に気づく頃、セストがやってきて記憶修正を施した。

ディノとエレナも朝一で治療室に来たし、イヴァンは城下の診療所の手伝いの後、午後になってから気を分けに来てくれた。

「朝、昼、晩と3回にわけてやりましょう。ディノもイヴァンも他の仕事がありますから、来られる時にこちらに来てもらえるになっています」

セストがリアの点滴を変えながら言う。お腹の子に影響のないように調節はしてあるが、だからといって長く投与していいものでもない。

「大丈夫なのか?」
「もう2日ほどは大丈夫です。その後は危険なので点滴ははずさないといけないですね。それまでに、意識が戻られるといいのですが」

少なくとも意識が戻れば、記憶の混乱はあっても食事はできる。

『ぱー、んーんー!ふぇっうっ、うぅぅぅ』
「どうした?」

聞こえてきた我が子の声にレオが答える。なにやら愚図っているようだが……

どうも自分はこの“風の言葉”をうまく理解できていないように思う。リアとはうまくコミュニケーションをとれていたのだろうか。

『んんんー!うぅっ、まー』
「リアは大丈夫だ。必ず目を覚ます」

とりあえず、そう返事をしてみるが納得のいかない様子のその子はレオの周りをぐるぐる風となって回りながらうなり続ける。

『うぅぅー!』

レオは困りながらも、小さな風を起こしてあやしてやることくらいしかできなかった。
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