風に恋して
そして、数日後。

「意識が戻りませんね。リア様の体力も限界で、点滴もこれ以上は続けられません。これでは……」

セストが今朝の記憶修正を終えて呟く。気を分けに来ていたエレナも心配そうに眠ったままのリアを見つめている。

「セスト……」
「はい?」

レオは眉を顰めてリアをじっと見つめ、そしてその視線を彼女のお腹に移した。ここのところ、ずっと愚図っていた我が子。それが今日はやけに静かだ。

「今日、こいつの声を聴いたか?」
「――っ!」

レオの言葉でセストもハッとしてリアを見る。落ち着いている、ように見えるのだ。けれど、それはもしかしたら……

「エレナ、処置できる?」
「少しなら……でも、お腹の子の回復には足りないです」

セストは記憶修正を終えたばかりで処置ができる状態じゃない。エレナも気を分けてしまっているので長くは処置できないだろう。

「ディノとイヴァンに知らせます」

すぐにセストが紙を風に乗せて飛ばす。けれど、彼らは養成学校の講義に行っている。戻るのには少し時間がかかる。

「俺がやる」
「レオ様、しかし……」
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