風に恋して
「どうして、どうしてなの?」

泣きながらオビディオにしがみつき、涙とともに溢れて止まらない想いを吐き出していく。

「オビディオ様っ……好き、好きなのに!」

大好きだった。情熱を秘めた瞳も、優しく抱きしめてくれる腕も、心地良い温もりも、ヒメナを呼ぶその声も、全部、全部……

「約束、したのにっ!こんなに好きなのに!私がっ……ごめ、なさいっ……ごめんなさい!」

あの夜、すべてが変わってしまった。こっそり交わした将来の約束が、誰かに伝えられることはなくなってしまった。

自分が、カリストに抱かれてしまったから。

「ヒメナ……っ」
「っ……は、んっ……」

オビディオがヒメナの唇を奪う。息もつけないほどの性急なキス。

いけないのに。求めては、いけないのに。

唇が離れたと思えば、オビディオに手を引かれて身体がベッドへと沈んだ。

「ヒメナ……夢を、見ようか。2人で…………」

涙でぼやけて、オビディオの表情はよく見えなかった。でも、どんな顔をしているのかは手に取るようにわかってしまう。彼もまた、秘めた想いとマリナへの罪悪感の間で苦しんでいる。彼はマリナを大切に想ってくれている。

マリナ。心優しい妹。自分はこれから一生苦しんでも構わない。どんな痛みでも耐えるから、だから……

(ごめ、んね……)

一夜の夢を見せて――
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