風に恋して
マリナとオビディオのくれた“夢”は、ヒメナの支えになった。

そして月日は流れ、エンツォが生まれる。

初めは半信半疑だった。なんとなくオビディオの面影があるかもしれないと思うのも、それは自分がオビディオのことを想うあまりに彼の姿を重ねてしまっているだけだと思い直した。

けれど、成長していくエンツォを見ているとそう思わずにいられなくなって。

時折使おうとする風の力も強く、口元がオビディオにそっくりで。瞳はヒメナの色であるし、目元や鼻もヒメナに似ている。それに、カリストが黒髪であるから2人の子として外見的には不自然ではないのだけれど。

加えて、カリストが外でたくさんの愛人を作っているというのに、なぜか誰も身ごもらない。カリストは少なくとも貴族として申し分ない地位と経済力を持っている。

彼女たちの中に、それを狙う者がいてもおかしくないことくらいヒメナにもわかる。カリストの血を引いた子供ができれば、彼と確かな繋がりを持つことができるのだ。

それなのに……自分も何度もカリストに抱かれているけれど、まったくそんな兆候がないのだ。

(まさか、本当に?)

ヒメナは首を振って自分を奮い立たせた。とにかく、エンツォの父親がオビディオでもカリストでも、ヒメナの子供だということに変わりはない。自分は変わらずエンツォを守るだけ。

できる限りの幸せを与えるのだ。
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