風に恋して
城に戻ったのは日も沈んで外が暗くなる頃になってからだった。夕食を終え、リアは研究室でほんやりと天井を見上げてため息をついた。

リアは、本当にエンツォを助けられたのだろうか。エンツォの復讐に燃えていた感情を消した。それは正しかったのだろうか。ただ、レオとリアが助かるための手段ではなかっただろうか。

自己満足……

「リア」
「っ、あ……レオ」

急に声を掛けられて、驚く。しかし、振り向けばレオが優しい顔でリアを見下ろしていて。リアは椅子から立ち上がった。

「ごめんね、ノックした?」
「ああ、一応な。でもどうした?ボーっとして……」

リアの手元を見たレオが言葉を切る。医療用語はよくわからなくても、そのカルテがエンツォものだということくらいはすぐにわかるだろう。

しばらく沈黙が続く。

「……私、正しかったのかな?」
「リア……」

ポツリと漏れた呟きに、レオがリアの頬に手を添える。

「わからなくて……私はエンツォの感情を1つ、奪ってしまったから」

本来の理に背いてエンツォの中の“真実”を変えてしまった。復讐心――褒められる感情ではなくても、それは大切なエンツォの一部であったのではないか。

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