風に恋して
「ねぇ、エンツォ。どこに行ってたの?」
「ちょっと……そうだな、夢をみていたんだ」

エンツォは少し考え込むように目を伏せてから、ヒメナを見つめて言った。

「夢?夢なら私もみたわ。とっても素敵な夢だったの!」

そのヒメナ言葉に、リアは思わず握った手に力を込めてしまった。気づいたレオがそっと肩を抱き寄せてくれる。

ヒメナがみたという夢は、おそらく夢ではない。リアが記憶を見たときにヒメナにも見えたであろうオビディオとの約束のこと。それを、夢だと思っているのだ。

「そう。俺の夢は……残念ながらあまりいいものじゃなかったんだ」

エンツォの寂しそうな笑顔に、ヒメナが首を傾げる。

「怖かったの?」
「いや……でも最後は、母さんの笑顔だったんだ。それで、目が覚めた」
「そうなの?よかったわね」

ヒメナが無邪気に笑う。エンツォは「うん」と笑顔を返した。

それからヒメナとエンツォは会えなかった時間を埋めるように話に花を咲かせ、レオとリアは2人が満足するまでずっとそれを聞いていた。
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