風に恋して
「明日からしばらく、雨が降るぞ」

その言葉にリアもつられて空を見上げる。

真っ青な、雲ひとつない空。少し風があるが、一見雨が降るようには思えない晴天。

そんなリアの表情を読み取って、レオは少し笑ってから手をかざした。その掌の上に風が集まって小さく渦を作っていく。

そして、それをリアの目の前に差し出した。

「お前ならわかるだろ?」
「ぁ……」

その風の渦からは、強い水の匂いがするはずだ。マーレ王国出身の者は水に関して敏感で、呪文も水属性。

特にリアはその能力が強く、医療関係の呪文以外のそれも操ることができる。本来義務教育の過程で習う呪文に加えて、攻撃性の高いものや防御力の高いものも。

おそらく、リアの特別な力はそういった才能に関係しているのだとレオは思う。

レオは風の渦を散らすと立ち上がった。リアとは少しずつ一緒にいる時間を増やしていこうと決めた。それに、あまり長居するとセストにも小言を言われる。

「今日は執務が早めに終わる。カタリナに言っておくから、夕食の時間は食堂に来い」

リアは答えなかったけれど、レオはリアの頭にキスを落として城へと戻った。
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