風に恋して
『きっと……取り戻してみせる。もう一度、振り向かせてやる』

リアはレオの後姿を見つめながら、その言葉を思い出す。

レオがそう宣言してから……彼は前よりもリアの様子を見に来るようになった。今のように、ちょっとした執務の合間にも。

そして、他愛のないことを2・3言喋って戻っていく。

あれから……レオはキス以上のことはしなくなった。キスも、額や頬、手の甲などに軽く触れる程度で、今のように頭のこともある。

それでも、リアの体温を上げるには十分だった。

リアは本と一緒に膝を抱えて、顔を埋めた。

わからない。いや、わかりたくない。

自分の身体が熱くなる理由も、レオを強く拒めない理由も、何もかも。リアの求めるものとは正反対の場所へとつながっている。

「私は……エンツォが、好き……」

自分に言い聞かせるように呟く。

両親のいないリアを支えてくれた優しい人。好き、なのに。

それなのに、どうして……エンツォの笑顔をうまく思い出せないのだろう。

どうして、浮かぶのはレオの優しい笑顔なのだろう――
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