風に恋して
「エンツォが……ちが、う、私は……好き」

リアが呟くと、レオの手にグッと力が籠もった。

「リア」

名前を呼ばれて、視線を上げるとレオがじっとリアを見つめていた。揺らめく情熱に絡めとられて、逸らせない。

最初に見つめ合ったときも、吸い込まれそうだった……漆黒の瞳。

「俺の瞳には、何が映っている?」
「わた、し……」

リアの答えに、レオは優しく微笑んだ。

「そう。お前が映っている。お前しか、見ていない。だから……」

グッと、レオの手がリアの頭を引き寄せる。呼吸が交わる距離。

身体が熱くて、心臓が痛いくらいにドキドキとして。レオには、リアの鼓動が伝わっているだろうか……

「だから、お前も……俺だけを見ろ」

リアはそっと目を閉じた。そしてすぐに唇に触れる熱さ。

それは、リアの心の水面を暖かい風でそっと揺らしていくようにリアを包み込む、優しいキスだった――…
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