風に恋して
その夜、レオはベッドに仰向けになり、じっと天井の一点を見つめていた。

『そんな顔しないで』

それは、確かにリアがレオに向かって言った言葉。

あの日――リアの、19歳の誕生日。レオがリアにプロポーズをして……初めて2人で夜を明かした、日。

リアが最初にレオの想いを受け止めてくれたのは、レオが強引にリアの気持ちを聞きだそうとして……気まずくなってしまった後。リアの母親クラウディアのちょっとした助け舟もあって、リアが自分の気持ちを告白してくれた。

男としてリアに接するようになったレオに、胸が痛くなるのが怖かっただけなのだと。それが恋だとクラウディアに教えてもらったのだと……

それでも、リアはキスより先に進むことをとても怖がって。すぐにでもプロポーズをして結婚したいと思っていたレオは随分待ったように思う。そんな時間も、リアのことを想えばつらいものではなかったけれど。

だから、忘れられるはずもない。リアがレオのすべてを受け入れようと決意してくれた日のこと。

リアの涙も笑顔も、レオにかけてくれた言葉から触れた肌の温度まで、すべてを鮮明に思い出せる。

同じはずのその出来事は、リアの記憶の海の底に眠っている。

「リア……」

そっと呟いて、レオは目を閉じた。

瞼の裏に鮮やかに広がる、広間の様子。城で行われたささやかなバースデーパーティだ。あの日、リアを連れて抜け出して、中庭に出たのだ。その、決意を胸に。
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