風に恋して
人間とは醜いもので、能力者が現れるたびに争いが起こった。能力者の奪い合い――戦争を有利に進めたり、他国の重要人物を暗殺したり、とにかく利用したい。彼らにとって、能力者の苦しみなど二の次なのだ。

先代の王、オビディオがオルフィーノ家を城に迎え入れた理由は赤い瞳を持つリア。彼女を守るため。

この国で1番安全な場所と言えばヴィエント城。

リアの故郷、マーレ王国は小国だが優秀なクラドールを多く輩出しているため、侵略しようとする国は少ない。力で従わせるよりは、何かしらの報酬と交換という形でクラドールを派遣してもらうほうがお互いに犠牲がなくて良い。

ただし、赤い瞳の能力者が現れた場合は別だ。どの国も……我先に手に入れようとする。少なくとも、それが歴史上の記録だった。

リアの存在を知ったマーレ国王は、リアの争奪戦が起こることを危惧して懇意にしていたオビディオに依頼した。リアを匿って欲しいと。

ヴィエントとマーレは昔から親交が深い。オビディオは彼の依頼を快諾し、また、マーレ王国でも指折りのクラドールであったリアの両親は怪しまれることなくヴィエントの王家専属クラドールとして城に入ることができた。

幸か不幸か、幼くして能力に目覚めてしまったリアは、両親に守られてひっそりと暮らしていたため、彼女が赤い瞳の所有者であることを知っている者は少ない。

レオがリアの能力について知ったのは、1番初めにリアが力を暴走させてしまったときのこと。

幼かったリアは鍛錬の途中でうまくいかないトラッタメントを無理矢理に完成させようとして、力が解放されてしまったのだ。リアの鍛錬を見ていた父親のリベルトが止めたが、やはりリアは副作用で寝込んだ。

そして、オビディオがレオに教えてくれたのだ。そのとき、すでにリアに淡い恋心を抱いていたレオにとって……リアは守るべき人となった。

リアが苦しまないように守るのは自分でありたい――そう、強く思った。

それなのに……
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