囚われの華

再会

嫌でも挨拶はしておかねばならない。
そう考え、着替えると
「出かけます。準備をお願い。」
そういって部屋に戻る。

ワードローブを開けて何を着るか、考えあぐね…
ようやく決めて着替え終わった頃、
「お嬢様、用意が出来ております。」
そう執事が告げに来たので
「分かりました。すぐに向かいます。」
部屋から出て、車に乗り込んだ。

「どちらに?」
そう聞かれて、

「まずは風月堂さんに。そのあとで水島さんのお屋敷まで。」
そう告げると車は静かに発進した。
いないといいけれど…
会いたいけど、会いたくない。
そんな人があの屋敷に入る。
あの人に会いたくないからあの会社に就職するのを嫌がったと言っても過言じゃなくて。

風月堂につくと、
「あら、いらっしゃいませ。遥様。
今日はどういったご用事で?」
と店主の奥さまに挨拶され、
「水島さんのとろにご挨拶に伺うの。
5000円くらいで箱に包んでいただける?」
そう告げると
「畏まりました。すぐにお持ちしますので、こちらでお待ちください。」
そういわれて側のイスに勧められる。

奥さんから言われたのだろう、店員の一人が暑いお抹茶を差しだしたので受け取って口につけた。

やっぱり苦い…
今の私の気持ち見たいね…そう感じた。

「こちらでよろしいですか?」
そういって見せてくれた箱には新作や人気の和菓子が綺麗にならんでいて、
「ありがとうございます。こちらで。」
そういって5000円札を差し出した。

「ありがとうございました。また、お越しください。」
そういって見送られ、車に乗り込んだ時、手に汗を握っていることに気づく。
緊張しているらしい。
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