黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
うちの学校も規則には甘くないはずなんだけど、先生たちも、彼らにだけはそういった注意ができないようだった。

ただ、翔太のほうは、良雄から受ける威圧的な印象とは少し違い、結構気さくで面白い人……という印象も、俺の中にはある。

…いや、あくまで、俺の中だけでの印象だけど。




良雄は、その翔太からの、『どったの?』という質問には答えず、間髪を入れずに続けた。


「てめぇ、“ 例の ” 転校生だよなぁ?
バスん中ぁ……わざわざこんなとこまでノコノコ歩いてくるっつーことはよぉ…

…俺達に用でもあんのかぁ? あ゙ぁ?」


そう言って、静かに俺の顔を睨みつける。


…やばい…。


先刻小町屋から受けたプレッシャーなんて、比較にもならない…。


正直、恐怖と緊張から、足がすくんでいた。

自分自身、正確にはよくわからないけど、全身が微かに、震えはじめている気さえする…。


そんな俺の様子を見て良雄は、不機嫌そうな表情から一変、薄ら笑いを浮かべはじめた。


「…遠いとこせっかくここまで来たんだからよぉ、用事あんだろぉ?
なぁ?
なんか言えよぉ、転校生…?」


……本当は、用事がある。

いや、あった。


『ちょっとだけ、静かにしてもらえませんか?』


確かにそれだけを言いに、わざわざここまで来たんだから。


…しかし、これは……。
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