黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
◆殴られたり、この先イジメの対象にされるのは何としてでも避けたかったため、ここ一回だけ己のプライドを犠牲にして、バス の中央通路で土下座をしようと思った。


……わかってる。


今、これから自分がしようとしていることが、どんなに情けない行為か…

…そして、自分自身のプライドをどんなに傷つける行為か…

…わかってる。


さらに周囲のクラスメイトから、

『 “ アレ ” が自分じゃなくて良かった…』

などという、哀れみや蔑みの視線が注がれるであろうことも、わかってる。


だけど翔太の隣り……しかも窓際席になんか座ったら、それこそホテルにつくまでの長い時間、どんな酷い目にあわされ続けるか、わかったものじゃない。

ましてや逆らって、ただでさえ暴力や残虐行為に悪評のある良雄と対峙するだなんて、ばかのやることだ。


……俺は一回、つばをごくんと飲み込んで、周囲を小さく見回した。


…座席に座っている周りのみんなは、今まで俺のことなんて見て見ぬ振りしてたくせに、これから俺が選ぶ行動に、興味津々といった様子で、横目で覗き見ている。

…気がする。


……こいつら……


そう思いかけたが、小町屋や司の忠告を無視して、こんな事態に陥ったのは、全て自分の責任なんだ。


「……選べねぇなら俺が決めてやろうか…?」


不意に聞こえた低音に、視線を正面に戻せば、良雄が苛立たしげに俺を睨んでいる。

あまつさえ、シートから腰を浮かせるような予備動作まで、はじめている……!


まずい……!


『早く行動を起こさないとやばい』


そんなのわかってる…!

…わかってるけど、自分のプライド……それに、周りの目が……!


頭の中で危険信号が点滅し続ける中、俺は…


【選択】

A:良雄が暴力に訴える前に、ちっぽけなプライドなんてかなぐり捨て、急いで床に膝をついた。
→【次のページへ】

B:保身とプライドとの葛藤に苦しみ、動くことができなかった。
→【61】
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