続・たとえどんなに辛いサヨナラが待っていたとしても
「歌の練習じゃなくて、歌いたい歌を好きに歌いたいんです。
たまには付き合ってくださいよ。
原点に帰るのも悪くないんじゃないですか?」


カスミ姉の話を聞くというのは建前で、俺も少し気分転換をしたいというのが本音なのかもしれない。

俺たちは歌手という職業で、歌うことが仕事で、人に聞かせるための歌を歌う必要がある。

だからなのか、たまに何のために歌っているのか、自分が歌を好きだという思いさえも見失ってしまいそうになるんだ。


「悩みでもあるの?
こんなこと言うと怒るかもしれないけど、ペーターは一番年下なんだから、もっとメンバーに甘えていいんだよ。
私でもいいし。」


「それはこっちのセリフです。
悩みがあるなら話してください。
妙なとこで年上ぶるのやめてもらえませんか。」


本人は明るく振る舞っているつもりかもしれないが、元気がないことがバレバレだ。

隠し事がしたいならもう少しうまくやってほしい。

俺が疲れているのはその通りだが、人の心配をしている場合じゃないだろう。
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