ジルとの対話
ほどなく街をあるくとスターリンはパブについた。
知り合いの顔も無いが、店にいる酔っぱらいに曇らせた表情を冷やかされた。
面倒になったのでジルの家へ帰り、黒猫のティティを撫でた。

「浮かない顔。スターリン。」

ティティは言った。

「さっきパブで飲んだけど同じ事を酔っぱらいに言われてきたよ。」

スターリンはティティの顎を撫でながら言った。

「ティティとジルはどうしてあんなに幸せそうに、一緒でいられるんだろ。今、片想いが重たく心にのしかかっているんだ。美しい詩も、私を慰めなかったほどね。」

ティティは寝転んでいた体を起こし、スターリンを見上げた。

「片想いじゃないわ。あなたのは、自分の幻想に過ぎないのよ。愛じゃないし、恋でもない。自分に酔っぱらっていただけなのよ。恋は、芸術とは違うから、思った事が叶わないの。叶わない事の方が自然なの。平気よ。」

ティティはスターリンに言った。

「平気か。」

スターリンはティティの言葉に安心して眠れそうだった。



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