ジルとの対話

スターリンのセオリー


愛とは、誰かを理想に祭り上げる事ではなく、誰かの理想になる事なのだ。
ジルとティティは互いに相手の理想になろうとしている。
理想に近づく毎に、関係は安定する。
幸せと一緒なのかはわからないけれど、1人より世間は動いている。
動いている事が幸せなのかは、わからない。

恥辱に見舞われるのに恐怖してまで、動いている世間は大切なのだろうか。
スターリンは思惑の中にいた。

「スターリン、相手の良い所しか見えないのは、自分というものを置き去りにしているのよ。だから、あなたが相手を自分の目で見るときに、あなたが欠けるのよ。上手くいくわけないわ。あなたがいないのだから。」

ティティは背伸びしながら言った。

「星を見ながら思ったんだ。片想いは見えないほどの星と同じで、誰が見ているかわからないが、計り知れない意味があるんじゃないかって。」

スターリンはうつむくと、消え入りそうな声で言った。

「それが、スターリンの幸せなら誰にも、なにも言えないわ。」

ティティは無表情で言った。

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