ジルとの対話

悪魔とキース

悪魔とキースには、似ている部分があった。背徳で道にそれた生活がそれだ。
魔術師よりも悪魔の同類ではないかと、思われるかも知れないが、実際違う。ある一面が悪魔のような部分をはらみ、キースを悪魔にしたてあげたいだけである。事実は悪ふざけであってもともとのキースの性格は魔術師的である。
理性と創造を備えているが、キースはジルより人間との関わりかたが独りよがりだった。
そこは魔術師の逆位置的部分を持っている。
悩みのたねは主にそこからきた。
アンナはキースを理解しようと努めた。しかし、キースがスターリンをあしらった夜は彼に不信感を抱いた。
「誰が来たの。」
アンナがキースに尋ねた。
「スターリンだ。」
キースはアンナに言った。
「帰すことなかったのに。」
アンナはがっかりしていった。
「ならあいつの所へ行くといい。まだ近くにいるからアンナは俺よりスターリンがいいんだろ。」
アンナは心外だとキースをじっと見据えた。
「どうしてそんな風にいうの。」
キースとアンナとの間に重たい空気が漂い、
ふたりの心はすれ違い始めた。キースはアンナがスターリンに対しやすらぎを感じてるのを察していた。
「俺は自分に自信がなくて、君を誰にもとられたくないだけなんだ。」
「そうね。」
アンナはキースに言った。
「帰すことなかったわ。」
アンナは立ち去ろうとしたが、キースは彼女の手をとり自らの手で包み込んだ。
「許してくれ、君にどこへも行って欲しくないんだ。」
アンナは眉間に皺を寄せた。キースの横に座りキースを見つめると抱き寄せた。
「わかった。」
どこにも行かないと彼に誓った。
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