巫女と王子と精霊の本

「…ここがマニル国…」


たどり着いたのは、マニル国が一望出来る丘の上だった。


これから津波が起きるんだよね、どうやって皆を避難させれば…。


さっきの人みたいに、嵐を信じてくれない人もいる。

どうすれば……。


『困ったら本に願えば、次にすべき事を教えてくれるよ』


確かフェルがそんな事を言ってた気が…。


私は本を見つめる。


「ねぇ、マニル国の人達を助けたい。私はどうすればいいの?」


試しに本に願ってみると…。


―パアアアアアッ!!


「わっ!?」

本が光った!!
ま、眩しい!!


私の言葉に、本が反応した。光が瞬き、パラパラとページがめくれる。


―魔王の災厄により、嵐が起こります。海に近いマニル国、カイン国の順番に、波に襲われ、多くの死者を出しました。



さっき見た物語の結末の下に、新しい物語が増えている。


《白の結末》

―魔王の災厄により、嵐が起こります。

王子エルシスは、海に近いマニル国の民を自国に避難させました。ですが、波はさらにカイン国を襲います。

王子エルシスはカイン国の民とマニル国の民を連れ、ハルバレーの丘へ逃げ、難を逃れました。



「これ……」


…これは本来在るべき結末だ。これが白の結末…。


「でも、王子エルシスがいないと結末は変えられないって事?」


ここで王子エルシスはキーパーソンになってる。
人探しなんてしてる間に、誰も助けられなくなっちゃうよ!!


―ゴォォォッ


「きゃあっ!!」


強い風に、打ち付けるような雨が降る。
風は木々を倒し、倒れた木は家を壊していく。


「いけないっ…取り合えず皆を集めてマニル国から逃げなきゃ!!」


エルシス王子の事は取り合えず今は保留!!


私は丘を駆け降り、マニル国へと入る。


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