巫女と王子と精霊の本



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―ギオウ国城、謁見の間。



「ほう、そなたがカイン国の王子と巫女か」


鋭く威厳のある視線、人の上に立つ者の瞳。まさに国王といえる老人が私達を見据える。



……な、なんか緊張してきた……
思わずエルシスを見上げる。
そんな私に気付いたエルシスは小さくうなずいた。


エルシス、大丈夫って励ましてくれたのかな?


「はい、私はカイン国第一王子エルシス・カイン」


エルシスはギオウ国の国王に怖じ気づく事なく堂々としてる。


やっぱりエルシスは王子様なんだよね…
そう思うと胸がチクリと痛んだ。



「我が名はシキ・ギオウ、なに用で参った?」


「時間が惜しい故に率直に要件を申します。我が国を竜が襲い、それは砦の魔女のせいだという事がわかりました。ここまで言えばお分かりですよね?」

「…ほう、砦の魔女の情報と入国の許可か」

「その通りです」



二人の会話がピリピリしている。
怖い…何故かそう思った。


「だがエルシス、お前に砦の魔女を討たせるわけにはいかぬ。我が国が他国の王子に救われたとあれば民の心はギオウ国を離れていく」

「…世界の終わりがかかっているんです、この世界を終わらせるつもりですか!」


エルシスが声を荒げる。


エルシス………
この世界はどうして国一つの世界にとらわれるんだろう。


どうして国どうしで助け合わないの?



「許可は出来ぬ。巫女の力を我らに貸し、我らが魔女を討てば良いであろう」


そんな……
魔女はエルシスにしか倒せないのに……


「…ギオウ国の国王様、それでは駄目です。魔女を倒せるのはエルシス王子だけ、他の誰にも出来ないです」



国王様を前に体が震える。
でも、言わなきゃ……
伝えなきゃ……



「今、国一つにとらわれていたら国どころか世界が消えてしまう。国王様もきっと色々なお考えがあるんだと思います。でも、きっとそこには、この国を守りたい、民を守りたいという思いからくるものだと思うから……」


だからどうか、この王子を信じてほしい。共に戦ってほしい…




「エルシス王子は私利私欲に動くような人間ではありません。ただこのアルサティアという世界に存在するカイン国という大切な人達が生きる場所を守りたいだけ。世界は全ての国、空、海、大地を含めて世界。皆、同じ世界に生きている。手を取り合ってはくれませんか?」

「国も含めて世界……か……」



国王様は何かを考えるように呟いた。


「アルサティアは皆さんの世界、魔王はその世界を壊そうとしています。今こそ国が助け合わなければならないと思います」

「魔王……その話は聞いている」

「お願いします、力を貸して下さい!」


バッと頭を下げる。

どうか、伝わって!!
エルシスの思い、私の思い!!



「……セキより連絡を受けてはいたが、変わった娘だな」


すると予想外な答えが返ってきた。



「変わってる……??」


もしかしなくても私の事だよね!?
だったら結構ショックだよ!!


「なに、落ち込む事はない。褒め言葉だ。お前は私にさらわれかけたというのに…普通に接するのだな」


「あ…いえ、やり方は間違っているとは思いますが国を守りたいと思っての行動だと思ったので…」


だから国王様を嫌うとか、そういう感情はわかなかった。



「…間違っている、と私に意見する人間はこの城にはもういなくなってしまった。お前のような人間がいれば間違った選択はしなかったのだろうな。すまなかった、巫女よ」


国王様は頭を下げる。


本当はすごく優しい人なのかもしれない。


「顔を上げて下さい、国王様。私はこの世界を救いたい。それは、このギオウ国も含めた世界を、という事ですから!」


気負ってほしくない。
だから笑顔を向けた。





















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