巫女と王子と精霊の本



「だけどフェル、フェルはいつまでこの世界にいられるの?」


今まで一度も姿を表した事なかったのに…



『僕はすぐに君の世界に戻らなきゃ。君がいない間、君の存在があの世界から消えてしまわないように』


…え……?
私の存在が消える?



『本来、さだめられた世界以外に干渉する事は許されないんだ。他の世界に関わりすぎれば、君の存在があの世界から消えてしまう』


「ええっ!じゃあ私は……」


この世界に関わりすぎれば消えちゃうって事!?



『そこは問題ないよ、君の存在が消えないように僕が君の代わりになってあの世界に存在しているからね。だから僕は早く帰らないといけないんだ』


「代わりにって、大丈夫?私、確か引っ越す予定だったんだけど…」


『…あぁ…ま、まぁ大丈夫だよ!』



えぇっ!不安なんですけど!!


「すごく戻るのが怖いけど、私頑張るよ」

『うん、君なら絶対にこの世界を変えられる。君しか変えられないんだ』



私にしか変えられない。
なら私はこの世界を変えよう。



私の大切な人達の為に………



―ズキッ



「いっ!?」


胸が痛い!!
これってもしかして…………



服の上から刻印に触れる。


『鈴奈!?』


フェルは心配そうに私の顔をのぞきこむ。



「う…ん、大丈夫だよ。少し疲れてるみたい」



痛みは一瞬だったし、すぐに消えてしまった。



『君はこの世界の人間じゃないから、この世界の病気には免疫がないんだ。それでもちゃんとお医者さんに見てもらうんだよ!』

「ふふっ。うん、わかったよフェル」



なんだかおかあさんみたいな事をいうフェルに笑ってしまう。

















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