巫女と王子と精霊の本




『じゃあね、鈴奈!』


そう言ってフェルは私の世界へと帰っていった。



「フェルは帰ったのか?」


それを見計らったかのようにエルシスが私の隣へと来る。



「うん、私の世界にね」


きっとフェルも戸惑う事が多かったと想う。それでも私の為に頑張ってくれてるんだもん、私も頑張らなきゃ!



「やっぱり帰りたいか?」

「へ?」



予想外な質問に驚いているとエルシスが続けて口を開く。



「お前の家族がいるんだろう?」



そういう事か。
私が家族がいる世界を恋しく思ってるんじゃないかと思ったのかな?



「帰りたいけど、私が今この世界にいるのは私が望んだ事だよ」


帰りたいよりも今はここで出来る事をしたい。


「でも、怖くないか?自分を知る人間がいないのは…」

「それは違うよ、エルシス。だって今はエルシスやセキ、セレナがいる。カイン国やマニル国の人達がいる。私を知っている人がたくさんいる…」


それはフェルがこの世界と巡り合わせてくれたから、エルシスと出会えたから出来た居場所。





「…鈴奈…。ずっと考えてた。お前が俺に全て話せなかった理由を」



エルシス………
そうやって考えてくれただけで嬉しい。もう嫌われてしまったとしたら、すごく悲しいから…


























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