巫女と王子と精霊の本
「お前の憎しみを、俺はどうしてやればいいかわからない、けどな、もう孤独にはしない。共に生きよう、鈴」
「エルシス……」
ありがとう、鈴君を恨まないでいてくれて…
「馬鹿を言うな!!お前たちなど、必要ない!!」
ーブワァァッ!!!
突風が吹き荒れる。
その、風から守るようにエルシスは私を背に庇った。
「エルシス王子!俺は姫さんを逃がすよ」
ラミュルナ王女を、風からかばうセキが、声を上げる。
「セキ!!」
セキも来てくれたんだ!!
皆がいる、こんなに心強いなんて…
「鈴奈!全部終わったら俺にご褒美ちょうだいよ?俺、頑張ったんだからさ」
悪戯に笑うセキに私は笑みを返す。
「考えておかないこともない!」
「えー、それどっちなの?」
「ふふっ」
セキ、ありがとう。
私、また落ち込んでた。
でも、なんだか未来を変えられる気がするんだ。皆が傍にいてくれるから…
「セキ!ヴェルデ国の姫を逃がせ!!」
エルシスの言葉に頷き、セキはラミュルナ王女の手を掴み走り出す。
「鈴奈!!」
ラミュルナ王女は困惑したように私を振り返る。
「信じて、ラミュルナ王女!」
不安な顔をしているラミュルナ王女を安心させるように笑う。
「…私は、あなたを信じています。また…会えますよね?」
「もちろん!またね、ラミュルナ王女!」
もう一度会える、そういう意味を込めて「またね」と言った。
そして、この人も連れて帰るんだ、今度こそ一人にしないために。
セキとラミュルナ王女の姿が見えなくなっても、鈴君は動こうとしない。
「鈴君……」
「あの女はそこの王子と同じ、この世界を白の結末にするキーだったからな、今この場にいないのならそれでかまわない」
そう、本来ならここでエルシスは傷を負ってしまう。
でも、物語では癒しの姫がそれを救った。
ラミュルナ王女がいなければ、エルシスは…
「それは、させない。私が守るから」
「無意味だ。お前はただの女。俺が守ってやらなければなにも…」
「鈴奈はお前が思っているより強い。あまりみくびらないほうがいいぞ」
エルシスが笑みを浮かべる。
エルシスは私を認めてくれてる。
それがすごく、嬉しい。
「わからないのなら、わからせるまでだ」
―ピキピキ…………シュンッ!!
氷の矛が現れた瞬間、一気に私たちに襲いかかってくる。