巫女と王子と精霊の本






―キィィッ


重い扉を開けてたどり着いたのは屋上だった。



「二人とも、どうしたの?」



手を繋いだまま笑顔を浮かべる二人に私は首を傾げる。



ここに何かあるの……?
見渡してみてもただの屋上だし…



「全てを捨てても……」

「え……?」




朱美ちゃんが真剣な瞳で私を見つめている。



「この世界での存在を失っても、鈴奈には行きたい場所があるの?」


「!!?」


どうして………?
どうしてだろう。朱美ちゃんが言ってること、アルサティアの事だよね?


「なんで知って……」

「鈴奈が、言ってたんだよ」


「私?」



一体どういうこと……?



「もし、もう一人の浅夏 鈴奈が現れたら教えてあげてほしいって」



朱美はいつの間に持ってきたのか、スクールバックの中身をあさりだす。



それって……フェルが何かをしたってこと?


でも、フェルは世界を壊そうとしたし、私の事なんてなんとも思ってないと思ってた…




「道はあるって」



そして差し出されたのは、あの本だった。



「これ……これって……」


あの時に消えたんじゃなかったの?
鈴君の、魔力にのみ込まれていくのをみたはずだった。


どうして………



「詳しくはわからない……。でも、全てを捨てる覚悟があるなら使えって…」



朱美が私に本を手渡す。



「鈴奈ちゃんが…幸せになれる道を選んで欲しい…」



千尋ちゃんが優しく微笑む。



「…あ……私………」



また、あの世界にいけるの?
あの世界で生きられるの?




その為に全てを捨てるのだとしても、もう二度と、ここには帰ってこれないんだとしても…



「二人とも、ありがとう。出会えて良かった……」



始めて出会ったはずなのに、もうずっと親友だったような、そんな人達……



ありがとう、朱美ちゃん、千尋ちゃん…




私、もう迷わないよ。
だって………



「大切な人がいるんだ、私…その人と生きていきたい」




私の言葉に、二人は頷いて手を離した。




受け取った本を見ると、そこには題名がかかれている。




今までは何も書かれてなかったのに…



『巫女と王子と精霊の本』



これ………。
そうか私はもう選んだんだ。
やっとこの世界の仲間になれたんだ……



本を抱き締めて涙を流す。



「幸せにね!!」

「元気でね……」



朱美ちゃんと千尋ちゃんが私に笑顔を向けてくれた。



「二人も、元気でね!!」


そう叫んで、本を開く。


「お願い……私をエルシスのところに連れていって!!」



―パァァァァッ!!!




あの懐かしい光が私を包み込む。
二人の姿はあっという間に見えなくなった。



さようなら…お父さん、お母さん…


さようなら…私の…世界…………































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