巫女と王子と精霊の本



「鈴奈、俺の前に乗れ」


エルシスが手綱をひいて馬を目の前に連れてくる。



「あ、ま、前に!?」

「なんだ、後ろは無理だろう。振り落とされるぞ」


いや、後ろとか前とかそういう問題じゃなくて!


「ほら、行くぞ」

「え、わわっ!」


ひょいっとエルシスに抱き上げられ、馬の前に横座りさせられる。


わ、結構高いんだ……
視界が広がったみたい。



「っ、」



エルシスがすぐ後ろに飛び乗り、私を後ろから抱き抱える。


「あっ……」



ち、ちち近い!!
エルシス匂いがする…
あったかい…


なんか私変態みたい?になってる。


「……………」


距離の近いエルシスをちらりと見やる。


えっ………?


見上げたエルシスの顔がほんのりと赤い。


エルシスも照れてるの?
だとしたら……


私を少しでも意識してるってこと?




「では、行ってらっしゃいませ」


やきもきしている私にセレナはシレッと言い放つ。



「う、うん?」



セレナが私に笑顔で手を振っている。



「セレナ!?」

「私は仕事がありますから」



シレッとして私にバスケットを手渡す。


「行くぞ」


エルシスが馬の腹を蹴ると同時に馬が駆け出す。



振り返るとセレナの笑顔が見えた。


セレナ、図ったな…
たぶん、私の為なんだろう。


そんなセレナに苦笑いを浮かべた。












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