巫女と王子と精霊の本



「私は、何を忘れているんだ……?何か、大切な事を忘れている気がする」



すべて話したあとも、ハミュルは記憶を取り戻すことはなかった。
ただ、音羽という少女には何かひっかかるものがあるらしい。



「ここに来たのも、何か意味があるんだろう。とりあえず行ってみないか?」



エルシスの提案に私達は頷き、都市へと向かった。




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都市へと向かう途中、私達は険しい森のなかを歩く。
ここは本当に美しい…綺麗な場所だった。


でも何故か、何かに守られているような、そんな気がした。




「これは……エクレア…」



ハミュルは突然立ち止まり、ピンク色の花に手を伸ばす。




「温かい季節にしか咲かない花なんだ」

「花に詳しいんだね」



私もハミュルと同じように花に触れた。



すると…


―フワッ


エクレアの花は黄色に色を変化させた。



「えぇぇぇっ!!?」


私は驚いて手を、パッと離した。




「ははっ、これはね、心を映す花なんだ。黄色は好奇心を表す。鈴奈はどうやら好奇心旺盛らしいね」




ハミュルは楽しそうに花の話をする。
でも突然、首を傾げた。




「あれ、私は…この話をどこかで、誰かにしたような……」





ハミュルが呟いた瞬間―………



『わぁっ!心を映す花なんて初めて見たわ!!』


音羽は感激したのか、なんどもエクレアの花に触れては手を離しを繰り返す。



『そうなのかい?エクレアの花なんてどこにでもあるよ』

『私の世界には…無かったの。私、ここにこれて良かった!』



音羽は嬉しそうに笑う。
そんな音羽をハミュルは温かい気持ちで見ていた。




『君は不思議な女性だよ。まるで妖精のようだよ』

『私が妖精!?ふふっ、私はただの女の子だよ』



音羽はおかしそうに笑う。



『でも、ただの女の子は光とともに現れたりしない』

『ふふっ、なんでかしらね。私も驚いてるの、今ここで生きていることに…』




音羽は一瞬表情を曇らせたが、すぐにそれを隠すように笑顔を浮かべた。



























































































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