巫女と王子と精霊の本
「ハミュル……」
「鈴奈、私は何を忘れてしまったんだろうね…」
ハミュルは私の手を握る。
その手が小刻みに震えているのがわかった。
「ハミュル……。忘れたものは取り戻したらいいんだよ。たとえそれが望んだものでなかったとしても、知らなければ進めないから…」
「………あぁ、そうだね。私も進まなければいけない。思い出さなければいけない気がするんだ」
ハミュルは決意したように真っ直ぐに私を見つめる。
私も、手伝うからね…
そんな気持ちを込めて手を握り返す。
「行けるか?体が辛いなら…」
「大丈夫だよ。ありがとう、エルシス」
ハミュルはエルシスに笑みを向け、歩き出す。
そして私達は都市へ足を踏み入れた。
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「わ…ぁ……。これは……」
そこは植物のツルに壊滅させられた廃都市であった。
人の気配は無く、崩れた建物ばかりが視界に広がっている。
「一体なにがあったんだ…?」
エルシスも驚愕したように立ち尽くしている。
「……これは……ドル・ディーチェの大樹…」
ハミュルがぽつりと呟く。
このツルに心当たりがあるようだ。
「ハミュル、これは………」
「この空中都市はドル・ディーチェという一つの世界なんだ。そしてこの世界はドル・ディーチェの大樹が守り存続させている。そして、私は………ドル・ディーチェの王だった」
ドル・ディーチェ……?
私の持ってる白の結末を綴る本にも載っていない、聞いたことの無い名前の世界だ。
「だが、その王がなぜ何百年以上もハミュルの丘にいたんだ?」
エルシスの言うとおりだ。
この世界の王様がどうして私達の世界に……?