巫女と王子と精霊の本


「まさか、記憶が無いのか?ここはアルサティアのカインだろ?」


アルサティアのカイン!!
やっぱり、ここは物語の世界なんだ…!!


私は本を取り出し、ページをめくる。


―魔王の災厄により、嵐が起こります。海に近いマニル国、カイン国の順番に、波に襲われ、多くの死者を出しました。


「…嵐……」

「なに?」

「嵐が来ます!!!沢山の死者が出る!!」


私が必死に言い募ると、男性は目を点にして私を見つめる。

それから、思いっきり吹き出した。



「くっ…くくっ…その心配は無い。アルサティアはここ何百年もの間嵐なんて来ていないからな」

「でも来るの!!!大きな嵐が!!」

「怖い夢でも見たんだろ」


何度言っても、男性は聞く耳をもたなかった。


「…あなたじゃ話にならない!!ねぇ、マニル国ってどこ!?」

「話にならないってお前なぁ…。なんだ、マニル国に行きたいのか?」



嵐の被害に最初に合うのはマニル国だ。


「そう!!マニル国に行きたいの!!」

「ここから東に進めば直ぐに着くぞ。マニル国はカインの直ぐ隣だからな」

「ありがとう!!」


早くマニル国に行って嵐が来る事を伝えなきゃ!!


私は男性が指指した方へと駆け出した。



「あ、おい!!なんだか変わった女だな…」


男性の呟きも知らないまま。








< 8 / 300 >

この作品をシェア

pagetop