secret name ~猫と私~
貴方を意識しています。
ハッキリとそう言えたら、楽になれるのか。

(困るに決まってる。)

ソファーに座って、持って帰ってきた書類を見ながら、自嘲気味に笑う。
自分はよくても、セッテを困らせるだけだ。

静かな部屋に響く料理の音が、耳に心地よい。
今はこの時間を大切にしよう。
書類をめくる手は止めず、時折訂正をかけながら、ゆっくりと過ごす穏やかな一時。

しばらくすると、佳乃の携帯電話が鳴り響いた。
せっかくのんびりしていたのにと愚痴をもらしたくなるも、それを飲み込む。
一応セッテに一声かけて、携帯電話を手に取れば、実家の母だった。

「もしもし。」

また、見合いの事だろうか。

『あ、よっちゃん?ひさしぶり~』

相変わらず元気そうな母に安心しながら用件を聞けば、ただの暇つぶしだと返ってくる。
そう言いながらも、心配していたのだと分かるほどには、佳乃も大人になった。

< 130 / 259 >

この作品をシェア

pagetop