secret name ~猫と私~
『そうそう、こないだね、あんたの同級生のまこちゃん、子供産まれたじゃんねぇ。』

「へぇ。」

出た、同級生の出産。

聞こえないように溜め息を吐き、興味の無い話の続きを聞いていく。
同級生の出産も、結婚も、聞き飽きた。
それで最後にはこういうのだ。

“あんたもはよ結婚しりん”と。

『ほいでね、あのこ里帰りしとったから、お母さん会いに行ったのよ。女の子だったんだけどねぇ、もう可愛くて可愛くて・・・』

ほんとうにうんざりだ。
この頃その手の話が多すぎて、耳にタコが出来そうである。

『お母さん、よっちゃんの子供に会いたいわぁ。はよ、抱かせりんね?』

「相手がいないわよ。」

邪険に扱っても、母はめげない。
何せ産まれたときから自分の母なので、あちらのほうが一枚も二枚も上手だ。
部下には恐れられている佳乃だが、実母にはいつまで経っても子供扱いを受けている。

『お見合いしたらいいじゃんか。』

「私は仕事がしたいの。」

恒例化しつつあるやり取りをすれば、電話の向こうから小さなため息が聞こえた。

『・・・あのねぇ、よっちゃん。お母さん、いつまでも若くいられんからね?』

そんなこと、分かっている。
いまどき40代で子供を産む事は珍しくないが、その分、自分も親も歳を取るのだ。
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