secret name ~猫と私~
自分では気にしていなかったが、出身地方の方言丸出しの母につられて、自然と出ていたのだろう。
大学時代に散々からかわれたので、言葉使いを徹底的に変えて、ずっと隠していたのに。
穴があったら、入りたい。

ようやく笑いの渦から生還したセッテだったが、思い出すと笑えてしまうようだった。
佳乃の方言が相当ツボに入ったらしい。

「悪かったわね、似合わなくて。」

ニヤニヤするセッテと顔を合わせないように、テーブルについた。
目の前で湯気を放つ、美味しそうな夕食を前に手を合わせる。

「いや、可愛かったで。高村さんの方言。普段から使えばええやん。」

「また似合わないって笑うんでしょ!」

再び思い出し、また堪えきれず笑いだす。
赤くなった顔を伏せて、箸をもつ。

もう二度とセッテの前では、母からの電話に出ないようにしよう。
そう心に決めた。

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