secret name ~猫と私~
あのイベント以降、ノーヴェとも何度か会ったが、相変わらずほとんど口を開かず、機械ばかりいじっている。
社長室で見かけた時に目があって、会釈しあったこともあったが、会話には程遠い。

2人とも、佳乃から見れば、趣味や飲み会などで遊んでいてもおかしくない年頃なのに。

(あ、彼、アラサーなんだっけ。)

どうみても30歳前後には見えない、セッテ。
嘘は言わないと思うので、本当にそれぐらいなのだろうが、やはり見えない。
もしもアラサーの上限あたりである32歳ならば、自分と3歳ほどしか変わらないのだ。

不思議な話だが、20代と30代なら何故か2歳ちがいほどで壁を感じるのに、同じ30代なら4歳離れていても気にならない。

(歳も、そんなに離れてない。)

そう考えてしまった自分が、情けない。
恋に気付いただけで、変わってしまった自分が。
それに仕事のパートナーに好意を抱くなど、これまで嫌悪の対象でしかなかった。

まさか、自分が嫌いなタイプの人間に成り下がるとは。
まだ信じたくない気持ちが、どこか心の片隅にある。

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